04 / KNOWLEDGE測定の不確かさ

IQ130と135。「5点の差」は、どのくらい大きいのか

135の方が高い。それは計算として正しい。でも、その人が本当に5点分だけ高い能力を持つ、とまで言えるだろうか。

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5点差は、たしかに存在する

ある人はIQ130、別の人はIQ135だった。ネット上で並べれば、135の方が上に来る。それ自体は間違いではない。測定結果として記録された数字は、たしかに5だけ違う。

けれど、身長が175cmと180cmの二人を比べるときと同じつもりで読んでよいのだろうか。身長を測る場合でも姿勢による誤差はあるが、知能検査では「能力」そのものを直接メジャーで測っているわけではない。限られた課題に対する行動から、背後にある能力を推定している。

同じ人が同じ日に、別の問題の組み合わせを解いていたら。あるいは一週間後、よく眠れた日に受けていたら。数字はまったく同じになるとは限らない。測定には誤差があるという当たり前の話が、135と130を単純な序列にしない理由になる。

まず、130と135の「珍しさ」は違う

平均100・標準偏差15の正規分布を仮定すると、130は平均より標準偏差二つ分、135は約2.33個分上になる。数字だけを見ればわずか5点でも、分布の右端では、超える人の割合が変わる。

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仮定上の得点 平均からの位置 その得点以上の理論上の割合 おおよその人数比
115 +1.00 SD 約15.87% 6人に1人
125 +1.67 SD 約4.78% 21人に1人
130 +2.00 SD 約2.28% 44人に1人
135 +2.33 SD 約0.98% 102人に1人
140 +2.67 SD 約0.38% 261人に1人

この表は、モデル上の面積を計算したものだ。特定の検査で各得点に正確にこの割合の人がいるという実測表ではない。とはいえ、「5点差でも分布の端では割合が大きく変わる」という感覚はつかめる。

しかし、珍しさの違いと、測定された二人の能力の違いがどれほど確かかは、まったく別の問いだ。

点数の周りに、幅を描いてみる

ここで仮の測定器を考えよう。能力を測る得点尺度は平均100・標準偏差15。測定の不確かさを表す**標準測定誤差(SEM)**を、説明のために4点と仮定する。この4は実際のWAISやWISCの精度ではなく、計算を練習するための値だ。

単純な正規誤差モデルを使えば、観測された130点の周りに「およそ130±1.96×4」、135点の周りに「135±1.96×4」という幅を描ける。四捨五入すれば、表のようになる。

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観測された値 仮定したSEM 説明用の約95%の幅
125 4 117〜133
130 4 122〜138
135 4 127〜143
140 4 132〜148
図解を表示しています。JavaScriptが無効な場合も、前後の表で数値を確認できます。

目に見えるのは、130と135の幅が大きく重なっていることだ。ただし区間が重なったら「差はない」と証明されたわけではない。差を判断するには、比較する値の誤差がどう組み合わさるかを、別に計算する必要がある。

二つの点数を比べるときは、誤差も二つある

130と135が別々の人の独立した測定で、どちらのSEMも4点だった、という非常に単純な仮定を置く。二つの測定値の差には、それぞれの測定誤差が乗る。その差の標準誤差は、√(4²+4²) ≒ 5.66点となる。

観測された差5点は、差の標準誤差5.66点より小さい。約95%の基準として1.96倍すると約11.1点だ。この仮定では、5点差だけを根拠に「二人の真の得点は確実に違う」とは結論できない。

実際の検査で使う判断方法はもっと複雑だ。年齢、得点域、検査の信頼性、再検査間隔、比較が同じ人の二つの指標なのか別人同士なのかなどで変わる。単にこの式を報告書へ当てはめて、診断することはできない。1

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比べたいもの 直感では 実際に確認したい情報
別々の二人の総合得点 135は130より5高い 各得点の精度、差の不確かさ、測定条件
同じ人の領域別得点 ある領域が別領域より15高い 領域間の相関、差の臨界値、ベースレート
同じ人の再検査結果 前回より8上がった 再検査信頼性、練習効果、時間経過、信頼できる変化の基準
異なる検査の結果 Aでは130、Bでは135 そもそも同じ尺度・基準・構成概念か

「信頼性が高い」と「何でも分かる」は違う

よく使われる古典的な測定モデルでは、観測得点の標準偏差と信頼性係数から、標準測定誤差を概算することがある。信頼性が高ければ、同じ条件の下での測定誤差が小さくなるという考え方だ。

しかし、信頼性が高い=使い方が正しいではない。例えば、身長計が毎回正確に身長を測れたとしても、その値を使って人の数学的なひらめきを予測するのは適切ではない。知能検査でも、得点が安定しているかという信頼性と、その得点を何に使ってよいかという妥当性は分けて考える。

APAが参加した心理検査の標準でも、得点を解釈する際には、その目的と根拠が重視される。2

「気になるから数字を知る」ことと、「その数字で進路や支援方針を決める」ことでは、必要な証拠の厚みが違う。

では、なぜ検査は小数点のない整数を出すのか

精度のない数字なら、最初から「高い・平均・低い」だけを表示すればよいのではないか。そう考える人もいるだろう。しかし数値があるからこそ、同じ人の成績を領域間で整理できたり、研究集団の平均的な違いを検討できたりする。

問題は、出力された桁を、そのまま確かさの桁だと思うことだ。デジタル時計が1秒まで表示できても、時計自体が1秒単位で正しいとは限らない。130と135の二つのラベルだけを見る前に、その幅や条件を確認してほしい。

結果報告書を前にしたら、こう質問したい

自分や子どもの検査結果を説明されたとき、質問する権利がある。専門家との面談で聞きたいことを、具体的な言葉にしてみる。

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質問 聞く理由
「この得点の信頼区間はどのくらいですか?」 1〜2点単位の違いを過剰に読まないため
「領域ごとの差は、実際によく見られる差ですか?」 凸凹の珍しさを知るため
「実施中の様子は、得点の解釈に影響しますか?」 一回の測定に入らない事情を確認するため
「今日の結果から、次に何を決めるのが適切ですか?」 数字そのものではなく、検査の目的に戻るため

130と135は、違う数字だ。けれど、数字が違うことと、その違いについて十分な証拠があることは同じではない。その距離を丁寧に見るのが、心理測定の面白いところだと思う。

「測定の誤差」は、計算できても消せない

信頼性係数を使った古典的な測定理論の単純化では、標準測定誤差を 得点の標準偏差 × √(1−信頼性係数) と表すことがある。標準偏差15、信頼性係数0.96という仮の条件なら、15×√0.04=3点だ。

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仮の信頼性係数 仮のSEM(SD=15) 95%幅の半分に相当する数値(約1.96×SEM)
0.84 6.00 11.76
0.91 4.50 8.82
0.96 3.00 5.88
0.99 1.50 2.94

この表から「どの検査の信頼性も0.96」と読まないでほしい。信頼性は検査、対象集団、用途、再測定の条件に依存するし、実際の得点域に応じて別の推定方法を使う場合もある。数式は、精度の違う測定器なら、同じ5点差の意味も変わると理解するためのものだ。

例えば、SEMが3点の世界と6点の世界を比べる。130と135の差は変わらないが、その差が誤差と比べてどれほど大きいかは変わる。数字が大きく見えるかどうかだけでは、何も決まらない。

「前回より10点上がった」は、もっと難しい

1年前の結果が120、今回が130だったとする。学校での学び、日々の経験、年齢による変化が影響したかもしれない。あるいは前回より体調がよかったのかもしれない。検査の問題形式に慣れた可能性もある。

再検査による変化を確かめるには、二つの結果の測定誤差に加え、練習効果や再検査信頼性の検討が必要になる。「10点上がった」という事実と、「教育によって能力が10点伸びた」という因果の説明の間には、まだ仕事が残っている。

そこで結果表を見るときは、得点差を一行で結論にせず、次の四つを確認したい。前と同じ検査・版だったか。二つの検査の間にどれくらい時間があったか。実施条件は同じか。変化がどこまで信頼できるかを判断する指標はあるか。点数の変化を丁寧に読むことは、その人の変化を否定することではない。

原典・確認先

「SEM=4」「130と135」の図表は完全な説明用モデルであり、実際の知能検査の基準値、臨床的な比較の判定表ではない。

  1. APA, Guidelines for Psychological Assessment and Evaluation(2020)。信頼性・測定誤差・検査の用途の評価。
  2. AERA / APA / NCME, Standards for Educational and Psychological Testing(2014)。

このシリーズの図表は説明用のオリジナル図、または原典に数値が記されたデータの独自作図です。研究の実測値と説明用の架空例を区別して記載しています。